比張 ( )
比湿qや混合比xの近似値。両者は定義は異なるが、いずれの量も、気圧pと水蒸気圧eから定まり、比湿qは、
q=622e/(p-0.378e)
混合比xは
x=622e/(p-e)
と表され、分母の部分が一部異なるだけで、両者は極めてよく類似している。一般に、
p>>e
なので、
q=x=622e/p
と近似される。622e/pを比張と特別の呼称で呼ぶこともあるが、文脈から、比湿が必要な場合は比湿と呼び、混合比が必要な場合は混合比と呼ぶ。
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比湿 (specific humidity)
単位質量の湿潤空気塊中に含まれる水蒸気の質量の比率で、qと表記される場合が多い。比湿qの定義式は、
q=εe/{p-(1-ε)e}
で与えられる。ここで、e;水蒸気圧、p;気圧、ε;密度比(=0.622)である。上式にεの具体的な値を代入すると、
q=0.622e/(p-0.378e)
となり、無次元量であるが、気象学では、通常、この値を1000倍して、
q=622e/(p-0.378e)
と表記し、単位としてg/kgを用いる習慣がある。
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非地衡風 (ageostrophic wind)
実際の風ベクトルと地衡風ベクトルの差。非地衡風は、鉛直運動や低気圧の発生、天気系の移動などの過程にとって重量。
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ヒートアイランド (heat island)
周辺より高温な領域が出現する現象。等温線分布が島の等高線の形状と類似していることからこの名がある。都市域では、浅層地温、地表面温度、都市キャノピー層気温、都市境界層気温において、それぞれ、ヒートアイランドが形成される。都市キャノピー層ヒートアイランドの成因として、放射収支量の増加、夜間の都市境界層からの暖気貫入、熱輸送係数や蒸発散量、熱容量の低下および人為的熱源が指摘されている。また、海陸風循環、山谷風循環、盆地循環等との密接な関係があることが指摘されている。都市域の最高温度と郊外の最低温度の差を都市ヒートアイランド強度と呼び、都市人口や都心における天空率との間に対応関係が存在することが知られている。 |
比熱 (specific heat)
単位質量の物質の温度が1℃変化する際に出入りするエネルギーを当該物質の比熱と呼び、通常、cと表記する。気体の場合には、温度を1℃変化させる方法が複数あるので、体積を一定に保ったままの場合の比熱を定積比熱Cv、圧力を一定に保った場合の比熱を定圧比熱Cpと呼び、区別している。
定積比熱Cvは、内部エネルギーの変化dUと温度の変化dTの間の比例定数であり、
dU=CvdT
が成り立つ。ところが、エネルギー等分配則により、温度Tの分子量m、自由度fの気体1モルの内部エネルギーUは
U=(f/2)(R*/m)T
と表されるので、この式をTで微分すると
dU=(f/2)(R*/m)dT
となる。ここで、R*;普遍気体定数(=8.31451Jmol-1K-1)、R*/m;気体定数である。上記の2式を比較すれば、明らかに、
Cv=(f/2)(R*/m)
でなければならない。2種類の比熱の間にはマイヤーの関係
Cp=Cv+R*/m
が成り立つので、定圧比熱Cpは、
Cp=(f/2)(R*/m)+R*/m={(f+2)/2}(R*/m)
でなければならない。従って、比熱比γは、
γ=Cp/Cv=(f+2)/f
と表される。
単原子分子の例としてヘリューム、2原子分子の例として水素、窒素、酸素、3原子分子の例として二酸化炭素、水蒸気をとりあげ、上記に記した方法により定圧比熱(cal/g・℃)と比熱比を求めたものの一覧を以下に示す。参考のため、同表の右端に、吉田ほか(1979):『六訂
物理学実験』三省堂p.335に掲載されている値を示してある。これらのガスが理想気体により良く近似されることが分かる。最下段には、混合気体である乾燥空気を2原子分子として処理した結果も示してある。乾燥空気を分子量28.966の2原子分子からなる理想気体として扱うことの妥当性が示唆される。
気 体 名 |
分子量 |
気体定数 |
自由度 |
本HP近似計算 |
吉田ほか(1979) |
定圧比熱 |
比熱比 |
定圧比熱 |
比熱比 |
ヘリューム |
4.00260 |
2077.150 |
3 |
1.2407 |
1.667 |
1.25 |
1.66 |
水 素 |
2.0158 |
4124.417 |
5 |
3.4489 |
1.400 |
3.39 |
1.410 |
窒 素 |
28.0134 |
296.7865 |
5 |
0.2482 |
1.400 |
0.247 |
1.405 |
酸 素 |
31.9988 |
259.8222 |
5 |
0.2173 |
1.400 |
0.2203 |
1.396 |
二酸化炭素 |
44.0098 |
188.9125 |
6 |
0.1580 |
1.400 |
0.200 |
1.302 |
水 蒸 気 |
18.0152 |
461.4992 |
6 |
0.4410 |
1.333 |
0.490 |
1.33 |
乾 燥 空 気 |
28.966 |
287.0262 |
(5) |
0.2400 |
1.400 |
0.2399 |
1.403 |
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比熱比 (specific-heat ratio)
気体に対しては、圧力を一定に保った場合の比熱を定圧比熱Cp、体積を一定に保ったままの場合の比熱を定積比熱Cvと2種類の比熱が定義されており、両者の比Cp/Cvを比熱比と呼び、記号γで表す。即ち、
γ=Cp/Cv
である。
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日の出 (sunrise)
太陽が東の地平線から天空に出てくること。日出とも言う。通常の天文学的な計算においては、太陽の中心(日心)が地球の中心を通る天文学的地平線(天の地平線)を超える瞬間、即ち、太陽高度角がゼロの瞬間を日出とする。しかし、厳密には、太陽の光球の上端が眼視地平線に達した瞬間が日出である。眼高差、大気差、視半径、地心視差等を考慮すると、地球の中心を通る天文学的地平線(天の地平線)から計った太陽高度が約0.8°になる瞬間が日の出である。詳しくは日出の項参照のこと。
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比容 (specific volume)
単位質量の空気塊の体積で、通常、αと表記する。比容は密度ρの逆数なので、定義式は、
α=1/ρ
となる。状態方程式から、
α=RT/p
でもある。ここで、R;乾燥空気の気体定数、T;気温、p;気圧である。
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氷晶 (ice crystal)
大気中の水蒸気が昇華してできる小さな氷の結晶。氷点下の気温で水蒸気により飽和している状態では、大気中に過冷却水が含まれるようになる。過冷却水を含む層には少数の氷晶が常に存在する。氷晶が出現するためには凍結をさせる性質を持った凝結核(氷晶核)の存在が必要である。-10℃より高温の部分にはこのような性質を持った凝結核(氷晶核)の数は極めて少ないが、温度が下がるにつれて氷晶核の数は増加する。約-33℃になると氷晶核が存在しなくても水は自発的に凍結することができるようになり、-40℃になると完全に純粋な水でも直ちに凍結する。
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氷晶雨 (freezing
rain)
氷晶雲から生じる降水を氷晶雨と呼ぶ。冷たい雨とも呼ぶ。
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氷晶雲 (ice cloud)
雲頂部分に氷晶を含む層を持つ雲を氷晶雲と呼ぶ。冷たい雲と呼ばれることもある。氷晶と過冷却微水滴や水蒸気が混在する氷晶雲の雲頂部分では、氷晶表面の飽和水蒸気圧が水滴表面の飽和水蒸気圧より小さいので、氷晶表面の水蒸気は既に飽和状態だが水滴表面の水蒸気は未飽和の状態となるため、過冷却微水滴は蒸発して消え氷晶表面には新たな水蒸気が昇華して氷晶が成長する。成長した氷晶は質量増加に伴い雲内の上昇気流を上回る大きな終端速度を持つに至り雲層内を降下し始める。その際、雲層下部の降下速度が小さい氷晶や過冷却微水滴と衝突してさらに成長し、雲層下端より低所まで降下するに至り降水となる。氷晶のまま降下する降水を雪と呼び、氷晶が融解して水滴となって降下する降水を雨と呼ぶ。氷晶雲から生じる降水を冷たい雨または氷晶雨と呼ぶ。
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氷晶核 (ice-forming
nucleus, ice nucleus)
飽和状態にあある水蒸気を凍結をさせる性質を持った凝結核を氷晶核と呼ぶ。
過冷却の雲粒の中の氷晶核の密度は
0℃では少数、
-10℃では1m3当たり10数個、
-20℃では1m3当たり約1000個、
といわれており、
-33℃〜-41℃では氷晶核の助けがなくても水が自発的に凍結し、
-40℃以下の雲内には過冷却状態の水滴は存在せず雲粒はすべて氷晶である。
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表面張力 (surface tension)
気体に接する液体表面上の仮想的な膜の上に長さ1mの線に直角に膜に沿って働く力。N/m単位で表される。表面張力は液体と気体の境界(表面、または界面)に平行に働き、表面を拡張しようとするすべての力に抗するので、液体の表面積を単位面積だけ拡張しようとすると単位面積あたり表面張力の大きさの仕事を行なわねばならない。
表面張力は温度に対して負の依存性があり、例えば、空気に接する温度t℃の純水の表面張力σに対しては、
σ=75.69-0.1413t-0.0002985t2
(単位、mN/m)
のような実験式が知られている。本式による-30℃〜100℃における水の表面張力を図示すると以下のようになる。
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秒 (second)
時間のSI基本単位で、記号sで表される。セシウム-133原子の基底状態に属する二つの超微細準位間の遷移に対応する輻射光の振動周期の9192631770倍を1秒とすると定められている。
1秒は、1960年までは、1標準太陽日の86400分の1と定義されていたが、1960年の第11回CGPM総会において、1900年1月0日12時に対応する1太陽年の31556925.9747分の1とすると改められた。
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ビル風 (building air flow)
周辺の建物と規模を全く異にする高層建築物の周辺で局所的に吹く突風。高層建築物の風上側壁面中央の上端から1/4の場所によどみ点が形成され、建築物に衝突したよどみ点高度の水平風が壁面で発散して、ビルを乗り越える風、壁面を吹き降りる風、建築物の側面を迂回する風が形成される。壁面下端まで降下した風はよどみ点高度の大きな運動量(風速)を保存しているので、同高度のオープンスペースよりも風速が増加する。わが国では東京浜松町の世界貿易センタービルディングが建設された1970年以降この風が知られるようになった。 |
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