中川用語集
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位置エネルギー  緯度  移流  移流方程式 

位置エネルギー(potential energy)
 単位質量当たりの位置エネルギーdEp

dEp=gz

と表される。ここで、g;重力加速度、z;高度である。従って、地上から高度hまでの大気柱の位置エネルギーEP
       h                   ph         p0                       h                              p0
EP=∫ρgzdz=-∫zdp=∫zdp=-phh+∫pdz=-phh+(R/g)∫Tdp
       0                     p0             ph                  0                                        ph
と表される。ここで、;地上気圧、;高度hの気圧、R;乾燥空気の気体定数、;分子量、T;温度である。高度hを十分大きく選ぶと、ph≒0だから、第1項は無視でき、地上から高度hまでの大気柱の位置エネルギーEP
        p0
EP=(R/g)∫Tdp
        ph
と近似表現される。
 地上から高度hまでの大気柱の内部エネルギーEI
              p0
EI=(cv/g)∫Tdp
                       ph
だから、位置エネルギーと内部エネルギーの和である全位置エネルギーEは、
           p0          p0                p0
E=EI+EP=(cv/g)∫Tdp+(R/g)∫Tdp={(cv+R)/g}∫Tdp
           ph          ph                ph
となる。ここで、cv;定積比熱である。これに、マイヤーの関係式

cv=cv+R

を代入すると、全位置エネルギーEは、
      p0
E=(c/g)∫Tdp
      ph
と表現される。ここで、c;定圧比熱である。

緯度(latitude)
地球上の位置を表すための変数で、地球上の当該点における鉛直線が赤道面と成す角。赤道面から北極方向に測った角度を正、南極方向に測った角度を負とする。
地球が完全な球である場合には、任意の地点の鉛直線は必ず地球の中心を通り、緯度は当該地点と地球の中心を結ぶ線分が赤道面と成す角、ということができる。厳密には、地球は球ではないので、任意の地点における鉛直線は、地球の中心を通らない。このため、地球の緯度を現す際には、地心緯度と測地緯度(或いは地理緯度)の2種類の緯度が定義される。地心緯度とは、当該地点と地球の中心を結ぶ線分が赤道面と成す角、として定義される。測地緯度(或いは地理緯度)とは、当該地点の鉛直線が赤道面と成す角、として定義される。
移流 (advection)

大気の速度場による大気中の物理量の輸送過程、または、大気中の移流される物理量の任意の地点における変化率を移流とよぶ。移流は、

-c・∇ψ

によってベクトル表記される。ここで、ψ;物理量、t;時間(s)、;流速ないしは波の位相速度(ms-1)である。総観気象学的議論の場合には、小規模の鉛直方向の大気中の物理量の輸送過程を対流と呼ぶのに対して、大規模な水平方向の物理量の輸送過程を移流と呼び、両者を区別する。

移流方程式 (advective equation)

∂ψ/∂t=-c・∇ψ

の形の偏微分方程式を移流方程式と呼ぶ。ここで、ψ;物理量、t;時間(s)、;流速ないしは波の位相速度(ms-1)である。物理量の勾配が上流から流入することによって物理量の局所的時間変化が起こることを意味している。
x方向1次元の場合、移流方程式は

∂ψ/∂t=-c∂ψ/∂x

と表される。解をψ=ψ(x,t)=X(x)ψ(t)と仮定して、上式を変数分離すると、

X(x)∂ψ(t)/∂t=-cψ(t)∂X(x)/∂x

両辺をcX(x)ψ(t)で除すと

{1/cψ(t)}∂ψ(t)/∂t=-{1/X(x)}∂X(x)/∂x

両辺の値は一定値になり、分離定数separation constantと呼ばれる。分離定数の与え方によって、異なる一般解が得られる。
分離定数を-1/λと仮定すると、左辺から

〔1/{cψ(t)}〕∂ψ(t)/∂t=-1/λ

両辺にc∂tを掛けると

∂ψ(t)/ψ(t)=-(c/λ)∂t

左辺は対数関数の微分なので

∂ln{ψ(t)}=-(c/λ)∂t

時間tに関して積分すると、基本解

ψ(t)=Aexp{(-(c/λ)t}

が得られる。変数分離した移流方程式の右辺から

{1/X(x)}∂X(x)/∂x=1/λ

両辺にX(x)を掛けると、

∂X(x)/∂x=(1/λ)X(x)

となる。やはり左辺は対数関数の微分なので

∂ln{X(x)}=(1/λ)∂x

距離xに関して積分すると、基本解

X(x)=Bexp{(1/λ)x}

が得られる。従って、移流方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=ABexp{(1/λ)x}exp{-(c/λ)t}+ψ

となる。ABをAと置き直すと、移流方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=Aexp{(1/λ)(x-ct)}+ψ

となる。
分離定数を1/λと仮定すると、左辺から

〔1/{cψ(t)}〕∂ψ(t)/∂t=1/λ

両辺にc∂tを掛けると

∂ψ(t)/ψ(t)=(c/λ)∂t

左辺は対数関数の微分なので

∂ln{ψ(t)}=(c/λ)∂t

時間tに関して積分すると、基本解

ψ(t)=Aexp{((c/λ)t}

が得られる。変数分離した移流方程式の右辺から

{1/X(x)}∂X(x)/∂x=-1/λ

両辺にX(x)を掛けると、

∂X(x)/∂x=-(1/λ)X(x)

となる。やはり左辺は対数関数の微分なので

∂ln{X(x)}=-(1/λ)∂x

距離xに関して積分すると、基本解

X(x)=Bexp{-(1/λ)x}

が得られる。従って、移流方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=ABexp{-(1/λ)x}exp{(c/λ)t}+ψ

となる。ABをAと置き直すと、移流方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=Aexp{-(1/λ)(x-ct)}+ψ

となる。
分離定数をiω/cと仮定すると、左辺から

〔1/{cψ(t)}〕∂ψ(t)/∂t=iω/c

両辺にcを掛けると

∂ψ(t)/ψ(t)=(iω)∂t

左辺は対数関数の微分なので

∂ln{ψ(t)}=(iω)∂t

時間tに関して積分すると、基本解は

ψ(t)=Aexp{(iω)t}

が得られる。変数分離した移流方程式の右辺から

{1/X(x)}∂X(x)/∂x=-iω/c

両辺にX(x)を掛けた後に右辺を左辺に移項すると、

∂X(x)/∂x+(iω/c)X(x)=0

となる。特性方程式

D+(iω/c)=0

の解は、

D=-iω/c

なので、基本解は

X(x)=Bexp{-(iω/c)x}

従って、移流方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=ABexp{-(iω/c)x}exp{(iω)t}+ψ

となる。ABをBと置き直すと、移流方程式の一般解ψ=ψ(x,t)は、

ψ=X(x)ψ(t)=Aexp{-(iω/c)(x-ct)}+ψ

となる。

 


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