中川用語集
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傾圧帯巻雲  傾圧ベクトル 経験的直交関数解析  傾度風 決定係数  ケプラー方程式 ケーラーの式  ケルビン ケルビンの式 巻雲  限界水深 圏界面 圏界面高度  圏界面漏斗 原子 巻積雲 巻層雲  顕熱

傾圧帯巻雲(baroclinic zone cirrus)
ジェット気流に伴なう巻雲シールド。ジェット気流の南側ないしは南東側に形成され、雲域の北極側の縁には、拉げたS字状の形態をした明瞭な境界が存在し、ジェット気流はそれに平行して緯度幅凡そ1度(約111km)北極寄りを流れている。巻雲シールドの下に中層雲や下層雲が存在する場合には、これらの雲の表面に巻雲シールドの影ができる。巻雲シールド付近の風速が42m/s以上でかつ乱れている場合には、風向に直交する方向の小規模な巻雲の列(transverse bands)が現れる。

水蒸気が十分に存在しなくて巻雲シールドが形成されない場合、巻雲の筋(cirrus streak)が出現することがある。巻雲の筋(cirrus streak)のほとんどは、気圧の谷の後面に位置し、ジェット気流に平行している。
傾圧ベクトル(baroclinic vector)
(1/ρ2)∇ρ×∇p

により定義されるベクトルを傾圧ベクトルと呼ぶ。ここで、ρ;密度、p;気圧である。この式は、気圧傾度力(-1/ρ)∇pの回転に等しい。即ち、

∇×〔(-1/ρ)∇p〕=-(1/ρ)∇×∇p+∇p×∇(-1/ρ)=-∇(-1/ρ)×∇p=(1/ρ2)∇ρ×∇p

として導かれる。このベクトルの大きさが0でない時、当該気体中の等密度面と等圧面は交差し、傾圧場が形成されていることがわかるので、傾圧ベクトルの名がある。傾圧ベクトルの大きさが0の時は、順圧場が形成されていることが分かる。
 傾圧ベクトルは傾圧場が形成されているために生じる渦度ベクトルの時間変化率を意味しており、傾圧場中の流体塊は密度増加方向から気圧増加方向へ回転角速度が加速される。渦度方程式

∂ζ/∂t=-v・∇(ζ+f)-(ζ+f)D-(∂w/∂x∂v/∂z-∂w/∂y∂u/∂z)+1/ρ2(∂ρ/∂x∂p/∂y-∂ρ/∂y∂p/∂x)

の右辺第4項 1/ρ2(∂ρ/∂x∂p/∂y-∂ρ/∂y∂p/∂x) は傾圧ベクトルの鉛直成分である。即ち、

k・(1/ρ)∇ρ×∇p=1/ρ2(∂ρ/∂x∂p/∂y-∂ρ/∂y∂p/∂x)

である。ここで、k;z軸方向の単位ベクトルである。この場合、鉛直軸の周りを密度が増加する方向から気圧が増加する方向へ回転角速度が増加するよう加速されるために水平渦度が増加することを意味している。
傾圧ベクトルと局地循環の関係としてよく例示される問題として、海陸風循環があげられる。この場合は、海岸線に平行する水平軸の周りの循環が対象であるので、海岸線に平行にy軸を設定し、傾圧ベクトルのy軸成分

j・(1/ρ)∇ρ×∇p=1/ρ2(∂ρ/∂z∂p/∂x-∂ρ/∂x∂p/∂z)

が吟味される。ここで、j;y軸方向の単位ベクトルである。日中の海岸線付近では、密度も気圧も下層ほど大きく内陸よりも海側で大きいので、∇ρも∇pも海側向きの下向ベクトルとなるが、気温差によるコントラストは気圧よりも密度が大きいため、∇ρの方が∇pよりも海側を向いている。このため、海岸線の周りを密度が増加する方向から気圧が増加する方向へ回転する運動が起こり、海側から内陸へ向かう海風が生じる。夜間はこの逆の状態となり陸風が生じる。

経験的直交関数解析(Empirical orthogonal functions (EOFs) analysis)

多変量解析の分野で、主成分分析principal component analysisと呼ばれているものと同一の手法である。EOF解析とも呼ばれる。

傾度風(gradient wind)
等圧線に平行に吹いているが、その等圧線が同心円を形成している時に吹く風を傾度風と呼ぶ。より厳密には、水平方向の運動方程式において加速度は存在するが、その加速度が求心加速度となっている時に吹く風を傾度風と定義する。
同心円状の等圧線を前提にしているので、高気圧または低気圧の中心を原点とする極座標を用いると便利である。動径rを高気圧または低気圧の中心からの距離とすると、等圧線に平行に吹く高気圧または低気圧の中の空気塊には、気圧傾度力、コリオリの力および円運動をしていることによる遠心力の3力が作用し、これらの3力がつり合っている。
例えば、中心から距離rの地点を反時計回りにvの速度で空気塊が回転している低気圧の場合には、気圧傾度力-(1/ρ)∂p/∂rが低気圧の中心に向って作用し、コリオリの力fvと遠心力v2/rが中心と反対方向に作用しており、コリオリの力と遠心力の合力が気圧傾度力とつり合っている。方向は既に判断してあるので、3力の絶対値で、この関係を表現すると、

|-(1/ρ)∂p/∂r|=|fv|+|v2/r|

となる。低気圧域では、低気圧の外に向って気圧が増加しているので∂p/∂r>0であり、かつ、v>0だから、上式の絶対値を外すと、

(1/ρ)∂p/∂r=fv+v2/r

となる。
一方、中心から距離rの地点を時計回りに-vの速度で空気塊が回転している高気圧の場合には、コリオリの力fvが高気圧の中心に向って作用し、気圧傾度力-(1/ρ)∂p/∂rと遠心力v2/rが中心と反対方向に作用しており、気圧傾度力と遠心力の合力がコリオリの力とつり合っている。
方向は既に判断してあるので、3力の絶対値で、この関係を表現すると、

|fv|=|-(1/ρ)∂p/∂r|+|v2/r|

となる。高気圧域では、高気圧の外に向って気圧が減少しているので∂p/∂r<0であり、かつ、v<0だから、上式の絶対値を外すと、

-fv=-(1/ρ)∂p/∂r+v2/r

となる。
高気圧の場合も低気圧の場合も絶対値を外した式は同一であり、いずれも、

-(1/ρ)∂p/∂r+fv+v2/r=0

となる。これは、気圧傾度∂p/∂rが反時計回りの風速vの放物線であることを意味している。この式を(1/ρ)∂p/∂rについて解くと

(1/ρ)∂p/∂r=v2/r+fv
         =(v/r)(v+rf)
         =(v+rf/2)2/r-rf2/4

と変形できるので、この放物線の軌跡の特徴が理解しやすい。
この放物線は、((1/ρ)∂p/∂r, v)=(0, 0)=(0, -rf)-(-rf2/4, -rf/2)を通り、かつ、(1/ρ)∂p/∂r<0 and v>0の象限は通らない。
先ず、放物線の対象軸より大きなv領域に限定して観察しよう。
(1/ρ)∂p/∂r>0の領域は、低気圧の圏内であることを意味する。この領域では、風速vは、気圧傾度0で無風であり、気圧傾度が増加すればするほど反時計回りの風速は増加するが、

v=(1/ρf)∂p/∂r

で表される地衡風風速より絶対値が小さい。
(1/ρ)∂p/∂r<0の領域は、高気圧の圏内であることを意味する。この領域では、風速vは、気圧傾度0で無風であり、気圧傾度の絶対値が増加すると当初は時計回りの風速が増加し、

v=(1/ρf)∂p/∂r

で表される地衡風風速より絶対値が大きいが、高気圧性の回転が存在しうる気圧傾度には限界があり、

-(1/ρ)∂p/∂r<-rf2/4

の強い気圧傾度の基では、高気圧は存在しない。つまり、低気圧の風は地衡風より弱くて高気圧の風は地衡風より強いく、中心示度が極端に低い発達した低気圧は存在しうるが、中心示度が極端に高い発達した高気圧は出現できない。これは、低気圧の場合には求心加速度は気圧傾度力により生じているので、低気圧の空気塊は中心示度が大きくなればなるほど低気圧性の回転速度を増加させれば、低気圧の構造を維持できるが、高気圧の場合には求心加速度はコリオリの力により生じているので、高気圧の空気塊は中心示度が大きくなればなるほど高気圧性の回転速度を増加させてコリオリの力を増加させて求心加速度を確保しようとするが、高気圧性の回転速度を増加せれば、速度に比例するコリオリの力の増加以上に速度の自乗に比例する遠心力が増加しするため、高気圧の中心の回りの円運動を維持できなくなることを意味している。
次に、放物線の対象軸より小さなv領域に注目しよう。
特に、注目されるのが、(1/ρ)∂p/∂r>0 and v<-rfの領域における解の存在である。
v<0であるから、明らかに、高気圧性の回転速度であるが、(1/ρ)∂p/∂r>0であるから低気圧である。つまり、時計回りの回転速度をもつ低気圧が存在しうることを意味している。
他の言い方をすれば、低気圧の渦巻きの方向が時計回りであるか反時計回りであるかは、最初にどちら回りであったかによっているだけで、低気圧における渦の回転方向は時計回りでも反時計回りでも、力学的にはどちらでも存在し得るということになる。移動性低気圧とか台風に代表される総観規模の低気圧では、時計回りの渦が発見されたことはないが、竜巻きのようなスケールの小さい渦巻では、時計回りと反時計回りの渦がほぼ半々の頻度で出現することが知られている。
決定係数(coefficient of determination)
回帰直線 y=ax+b によって説明変数xから推定される値の分散が、被説明変数の生データの値の分散をどの程度再現しているかを示す指標で、相関係数の自乗に等しい。寄与率ともいう。
すべての説明変数xiに対して推定値yiを求めて、それらを積算すれば、

i=ai+b年

なので、説明変数xの平均値xと被説明変数yの平均値yは、回帰直線 y=ax+b を満足する。即ち、回帰直線による推定値ax+bは、被説明変数yの平均値yを必ず再現している。従って、回帰直線による推定値ax+bが被説明変数yの分散(yi-y)2を正確に再現できる回帰直線ほど、モデルとして優れていることになる。回帰直線による推定値の平均は ax+b なので、回帰直線による推定値 axi+b の 平均値の回りの分散は

(axi+b-ax-b)2=a2(xi-x)2

と表現される。従って、推定値の分散とデータの分散の比は、

a2(xi-
x)2/(yi-y)2

となり、これは決定係数あるいは寄与率と呼ばれる。

回帰係数a

a=(N肺iyi-肺ii)/{N肺i2-(肺i)2

として決定されるので、これを利用すると、
決定係数は、

a2(xi-x)2/(yi-y)2

 =a2{N肺i2-(肺i)2})/{N輩i2-(輩i)2}
 =(N肺iyi-肺ii)2/{N肺i2-(肺i)2}2{N肺i2-(肺i)2})/{N輩i2-(輩i)2}
 =(N肺iyi-肺ii)2/{N肺i2-(肺i)2}/{N輩i2-(輩i)2}
 =r2 

となる。即ち、決定係数(推定値の分散とデータの分散の比)は、相関係数

=(N肺iyi-肺ii)/{N肺i2-(肺i)2}0.5/{N輩i2-(輩i)2}0.5 

の自乗に等しい。即ち、相関係数の自乗r2は、生のデータのもつ平均値の回りの分散のうち回帰直線による推定値によって説明できる分散の割合を意味している。従って、2変数xとyの直線性を示す尺度としては、相関係数rよりも相関係数の自乗r2の方が適していることになる。
また、回帰直線の係数 a と相関係数 r の関係は、

a2=(σy2x2)r2

とも表現できる。相関係数の自乗が1の場合は、決定係数が1であるので、

σy2=σx2

でなくてはならない。従って、相関係数の自乗が1の場合は、回帰直線の勾配aは

a=±1

でなくてはならない。

ケプラー方程式(Kepler's equation)
中心天体の周りの楕円軌道上を公転している天体の離心近点離角Eと平均近点離角Mの間に成り立つ次式

E-e sinE  = 2πt/P =

をケプラー方程式と呼ぶ。ここで、e;離心率、π;円周率、t;時間、P;公転角速度である。
長半径a、離心率eの楕円軌道上を公転している太陽を例にして説明してみたい。

地球F(緑○)は公転軌道の楕円の焦点Fに存在し、太陽(赤○)は楕円上の点Qに存在するとする。軌道中心Cと地球Fが存在する焦点Fの距離CFはaeである。地球Fと太陽が最も接近する場所である点Pを近日点と呼ぶ。楕円軌道長軸上の近日点と反対側の点を遠日点と呼ぶ。軌道中心Cと中心を共有し近日点と遠日点で接する半径aの補助円を描く。真太陽Qを通る軌道長直径への垂線と補助円との交点を仮太陽Q'、軌道中心Cと真太陽Qを結ぶ直線が補助円と交わる点を力学平均太陽Q"と呼ぶ(通常の平均太陽とは異なるので注意すること)。
近点離角とは、軌道中心Cや地球Fから天体が見える方向が近日点の方向からどれだけ離れているかを表す角度のことである。軌道中心Cからみた真太陽Qや力学平均太陽Q"の近点離角Mを平均近点離角と呼び、軌道中心Cから見た仮太陽Q'の近点離角Eを離心近点離角と呼ぶ。これに対して、中心天体である地球Fから見た真太陽Qの近点離角θを真近点離角と呼ぶ。力学平均太陽Q"は一定の角速度Pで補助円上を公転する。真太陽Qは一定の面積速度で公転楕円上を公転する。
軌道中心Cと仮太陽Q'を結ぶベクトルCQ'が近日点以降移動した部分の面積Q'CPは

πa2(E/2π) = (1/2)a2E

と表現できる。これに対して、軌道中心Cと仮太陽Q'および地球Fで形成される三角形Q'CFの面積は

a×sinE×ae×(1/2) = (1/2)a2e sinE

と表される。従って、地球Fと仮太陽Q'を結ぶベクトルFQ'が近日点以降移動した部分の面積Q'FPは、両者の差

(1/2)a2E-(1/2)a2e sinE = (1/2)a2(E-e sinE)

と表すことができる。
地球Fと真太陽Qを結ぶベクトルFQが近日点以降移動した部分の面積QFPは、面積速度一定の法則により、正確に近日点通過後の経過時間に比例する。地球Fと仮太陽Q'を結ぶベクトルFQ'が近日点以降移動した部分の面積Q'FPは、地球Fと真太陽Qを結ぶベクトルFQが近日点以降移動した部分の面積QFPを軌道短直径方向のみに(1-e2)1/2倍したものに等しいから、地球Fと仮太陽Q'を結ぶベクトルFQ'が近日点以降移動した部分の面積QFPも正確に近日点通過後の経過時間に比例しており、かつ、1年間でのその面積は補助円の面積πa2に等しくなる。力学平均太陽Q"も一定の面積速度で補助円上を公転するので、軌道中心Cの周りの力学平均太陽Q"の面積速度と地球Fの周りの仮太陽Q'の面積速度は等しくなくてはならない。即ち、地球Fと仮太陽Q'を結ぶベクトルFQ'が近日点以降移動した部分の面積Q'FP

(1/2)a2(E-e sinE)

は、軌道中心Cと力学平均太陽Q"を結ぶベクトルCQ"が近日点以降移動した部分の面積Q"FP

πa2(M/2π)=(1/2)a2M

に等しい。従って、

(1/2)a2(E-e sinE) = (1/2)a2

が成り立つ。両辺を(1/2)a2で除せば

E-e sinE =

が得られる。これはケプラー方程式そのものである。
離心近点離角Eが分かれば、楕円軌道上の真太陽の長軸方向と短軸方向の成分(CNの長さとNQの長さ)および地球Fと真太陽Qの距離r(FQの長さ)は、それぞれ、

a cosE

a(1-e2)1/2sinE

a(1-e cosE)

として求めることができる。しかしながら、平均近点離角Mは近日点を通過してからの経過時間がわかれば直ちに求まるが、離心近点離角Eは解析的に求めることは出来ないので、ケプラー方程式を用いて既知の平均近点離角Mから数値的に求める必要がある。
地球Fと真太陽Qの距離r(FQの長さ)は、真近点離角θを用いると、

r = a(1-e2)/(1+e cosθ)

と表すことが出来る。
この関係式は力学的に求めることが出来る。動径r方向の運動方程式を立てると

mdr2/dt2-mr(dθ/dt)2=-GMm/r2

となる。ここで、G;万有引力定数、M;太陽の質量、m;地球の質量であり、右辺は太陽と地球の間に働く万有引力である。両辺を地球の質量mで除すと、

dr2/dt2-r(dθ/dt)2=-GM/r2

である。面積速度を

(1/2)r2dθ/dt=H

と置くと、

dθ/dt=2H/r2

であるので、これを代入すると、

dr2/dt2-4H2/r3=-GM/r2

となる。微分変数を時間tから真近点離角θにに置き換えると

4H2/r2d(1/r2dr/dθ)/dθ-4H2/r3=-GM/r2

となる。更に、

u=1/r

と置くと、

1/r2dr/dθ=-du/dθ

だから、運動方程式は、

d2u/dθ2+u=GM/(4H2)

という定係数2階微分方程式になるので、一般解として、

u=Ccos(θ+θ0)+GM/(4H2)

が得られる。θ0として近日点黄経を用いると、

u=Ccosθ+GM/(4H2)

だから、求めようとしている関係式

r=1/[Ccosθ+GM/(4H2)]=4H2/(GM)/[1+4CH2/(GM)cosθ]

が得られる。両式の比較から、

a=4H2/[GM(1-e2)]

C=eGM/(4H2)

の関係が満たされていなければならない。

ケーラーの式(Kohler's equation)
ラウールの法則ケルビンの式を組み合わせると、分子量Msの塩が半径rμmの水滴にmskg溶けている場合の温度T、曲率半径rμmの水面上の飽和水蒸気圧の飽和度Er/Eを表す次式

/=e2σ/(ρwRrT){1-3imsMw/(4πρwMsr3)}

を得ることができる。ここで、σ;水の表面張力、ρw;水の密度、Mw;水の分子量、i;解離するイオン数である。この式をケーラーの式と呼び、横軸に曲率半径r、縦軸に飽和度/るないしは過飽和度/-1を目盛った直交座標系にケーラーの式の値をプロットしたグラフをケーラー曲線と呼ぶ。
上記のケーラーの式は、

/≒1+2σ/(ρwRrT)-3imsMw/(4πρwMsr3)}

のように、近似表現することができる。上式右辺の第2項は曲率項、第3項は溶質項と呼ばれる。曲率項が曲率半径の減少に伴って飽和度を上昇させるのに対して、溶質項は曲率半径の減少に伴って飽和度を下降させる。このため、臨界曲率半径までは曲率半径の減少に伴って飽和度が増加するが、臨界曲率半径以下では曲率半径の減少に伴って飽和度が減少し、飽和度は臨界曲率半径において最大値を持ち、臨界飽和度と呼ばれる。
ケルビン(kelvin)
熱力学的温度のSI単位で、記号Kで表される。1ケルビンは、水の三重点を表す熱力学的温度の1/273.16と定義されている。摂氏温度t℃と熱力学的温度Tの間には、

T=t+273.15

の関係がある。
ケルビンの式(Kelvin's equation)
飽和度の形で表した曲率半径rの水面上の飽和水蒸気圧を、曲率半径rと温度Tの関数として与える式で、以下のように表される。

/=e2εσ/(ρwRrT)

ここで、;平面(曲率半径∞)の水面上の飽和水蒸気圧、ε;密度比(=0.622)、σ;水の表面張力(=7.5×10-2N/m)、ρw;水の密度(=1Mg/m3)、R;乾燥空気の気体定数(=287JK-1kg-1)である。このため、曲率半径rをμm単位、温度TをK単位で与える場合のケルビンの式は、

/=e0.3278/(rT)

と表される。
半径rの液滴にdnモルの水蒸気が新たに凝結してdnモルの液体が不可される際の、液滴表面、液滴、水蒸気の化学ポテンシャルμの変化は、それぞれ、σdA、μ(曲率半径rの液体)dMw、およびμ(曲率半径rの水蒸気)dMvと表されるので、系全体での化学ポテンシャルの変化の総和は保存され、

σdA+μ(曲率半径rの液体)dMw+μ(曲率半径rの水蒸気)dMv=0

と表される。水蒸気の質量の減少dMvと液滴の質量の増加dMwは等しいので、

dMv=-dMw

であり、さらに、

dA=(2/rρw)dMw

なので、上式は、

(2σ/rρw)dMw+μ(曲率半径rの液体)dMw-μ(曲率半径rの水蒸気)dMw=0

となる。上式左辺第1項を右辺に移項した後に両辺を-dMwで除すと、

μ(曲率半径rの水蒸気)-μ(曲率半径rの液体)=2σ/(rρw)

が得られる。この式において、r→∞とおくと、

μ(曲率半径∞の液体)=μ(曲率半径∞の水蒸気)

となるので、水面を挟んで液体と蒸気が平衡状態にある場合、水面が平面の場合には液体の化学ポテンシャルと水蒸気の化学ポテンシャルが等しいが、通常は、液体の方が化学ポテンシャルが高い。液体はほぼ完全な比圧縮性流体であるから、液体の化学ポテンシャルは圧力には依存しないので、

μ(曲率半径rの液体)=μ(曲率半径∞の液体)=μ(曲率半径∞の水蒸気)

と表現することが可能であるため、上式は、

μ(曲率半径rの水蒸気)-μ(曲率半径∞の水蒸気)=2σ/(rρw)

と表現できる。本式は、化学ポテンシャルを用いて表現したラプラスの法則と看做すことができる。温度T、水蒸気圧eの水蒸気の化学ポテンシャルμは、

μ=μ0+RTlogee

なので、上記の化学ポテンシャルバランスの式は、

μ0+RTlogeE0-RTlogeE=2σ/(rρw)

と表現できる。ここで、μ0;標準化学ポテンシャルである。左辺を整理した後に両辺をで除すと、

loge(E/E)=2σ/(ρwRrT)

が得られる。この式を指数表現に変換すると、

/=e2σ/(ρwRrT)

となる。本式はケルビンの式に他ならない。

巻雲(cirrus)
毛状の上層雲。雲を形成する氷晶が蒸発しながら落下するため、このような形状を呈するとされている。
限界水深(critical depth)
開水路の流れが、常流となるか射流となるかは、水深による。その境界の水深を限界水深hcと呼び、

hc={Q2/(gW2)}1/3

で与えられる。ここで、Q;流量、g;重力加速度、W;水路幅である。開水路の水深が限界水深より深いと常流となり、逆に、限界水深より浅いと射流となる。
圏界面(tropopause)
大気の鉛直構造はいくつかの圏に分けられるが、その圏と圏の境界を圏界面と呼ぶ。対流圏と成層圏の境界を対流圏界面tropopause、成層圏と中間圏の境界を成層圏界面stratopause、中間圏と熱圏の境界を中間圏界面mesopauseと呼んで区別する。特に注記しないで圏界面と表記する場合は、対流圏界面を指すのが一般的である。
圏界面高度(height of the tropopause)
地表面から対流圏界面までの距離を圏界面高度と呼ぶ。対流圏の厚さと同じものになる。圏界面高度は地理的位置と季節に依存するが、特に緯度に著しく依存する。対流圏の厚さは、主として対流圏の温度に依存するので、圏界面高度は暖候季に高く、寒候季に低く、低緯度地方で高く、高緯度地方で低い。年平均では、熱帯地方で16kmに達する一方、極地方では8km程度に過ぎない。どの地方も夏季の圏界面高度は年平均より更に高くなり、冬季には低くなる。台風襲来時の圏界面高度はわが国でも18kmに達する。圏界面高度は低緯度地方から高緯度地方に向かってなだらかに高度が低下しているのではなく、高緯度側の圏界面と低緯度側の圏界面は中緯度で食い違っており二重圏界面構造をなしていることが多い。また、発達した低気圧や前線の上層の圏界面高度は大きく落ち込み圏界面漏斗が形成されていることが多い。
圏界面漏斗(tropopause funnel)
漏斗、あるいは鉢(ボール)の様な形状に低くなっている対流圏界面の凹みを圏界面漏斗と呼ぶ。対流圏に寒冷低気圧が存在していると対流圏の層厚が減少するため上空の成層圏が下方に広がり、両者の境界である対流圏界面の形態が漏斗、あるいは鉢(ボール)状になる。圏界面漏斗上方の成層圏は下降気流場となり暖域となるので、対流圏が高密度な冷気で占められているにも係らず、その上の成層圏を閉めている低密度な暖気の影響で、大気全層の質量分布によって決まる地上気圧場には弱い低気圧が解析される。
原子(atom)
 物質の最小構成単位となる粒子を原子と呼ぶ。原子は原子核と電子殻から構成されている。原子核は核力で結びついた陽子と中性子から構成されており、陽子は正の電荷を帯びており中性子は電荷を帯びておらず電気的には中性である。電子殻内には原子核内の陽子と同数の負の電荷を帯びた電子が存在し、原子核内の陽子のもつ正電荷との間の電磁力による引力により原子核の周囲を回転している。電子殻内の電子の数は原子核内の陽子の数に等しい。陽子の数または電子の数を原子番号と呼ぶ。
 原子はほぼ球状であり、半径は10-8cm程度、原子核の半径は原子の半径の約10万分の1の10-13cm程度と小さく、原子核と電子殻の間には真空が広がっている。原子核を構成する陽子や中性子の質量は1.66×10-24g程度であり、電子の質量はその約1800分の1の約9.11×10-28g程度である。
巻積雲(cirrocumulus)
団塊状の上層雲。腕を一杯に伸ばして小指1本の幅以内の大きさ(視野角1°未満)。
巻層雲(cirrostratus)
層状の上層雲。背後に太陽がある場合、太陽の光球の形が分かり、暈が掛かることが多い。
顕熱(sensible heat)

等圧状態で相変化を伴わず温度だけが変化しながら物質に出入りする熱量を顕熱と呼ぶ。エンタルピーとも呼ばれる。これに対して、物質に熱量が出入りしているにもかかわらず、温度も圧力も変化しないで、熱量の出入りに応じて、準静的に物質が共存している一方の相から他方の相へ変化する変化を等温等圧変化と呼び、等温等圧変化の際に出入りする熱量を潜熱と呼ぶ。


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