中川用語集
用語集Topへ戻る前に戻る 
  中川清隆ホームページTOP      ←も→   


目視観測 (eye observation)
観測員の目視により行う気象観測。現在では、多くの観測項目の自動化が実現しているが、雲(種類、量、高さ)、視程、天気現象などの項目は目視によっている。
持上げ凝結高度 (lifting condensation level)
未飽和の潤空気塊を断熱的に持ち上げて空気塊が飽和に達する高度。持上げ凝結高度は下層雲雲底高度に近い。
未飽和空気塊が上昇すると、気圧p、気温T、水蒸気圧e、露点τは何れも減少するが、水蒸気量wは不変である。従って、

w=εe/p=const.

である。ここで、ε;密度比(=0.622)である。両辺の自然対数をとると

lnw=lnε+lne-lnp=const.

となる。これを高度zで微分すると

(1/w)dw/dz=(1/e)de/dz-(1/p)dp/dz=0

従って、上記に状態方程式を代入して整理すると

(1/e)de/dz=(1/p)dp/dz=-g/RT・・・・・・・・(1)

となる。
一方、露点の定義式

e=E(τ)

に対して、両辺自然対数をとった後に高度zで微分すると

(1/e)de/dz=(1/E)(dE/dτ)(dτ/dz)・・・・・・・・(2)

が得られる。
(1)式と(2)式の右辺同志は等しいから

(1/E)(dE/dτ)(dτ/dz)=-g/RT

となる。これを整理すると、

d τ/dz=-g/(RT)/[(1/E)dE/dτ]

が得られる。これにクラペイロン・クラジウスの式

(1/E)dE/dτ=εL(τ)/(Rτ2)

を代入して整理すると最終的に

d τ/dz=-τ2g/{εTL(τ)}

を得る。ただし、右辺のτは絶対温度目盛りである。
これは、未飽和空気塊が断熱上昇する際の露点τの高度変化率を与える式である。
τ=0℃=273.15K、T≒τの時の減率は

d τ/dz=-τg/{εL(τ)}
=-(273.152x9.80665)/(0.622x273.15x4.18x1000x596.73)
=-0.0001727K/m
=-0.1727K/100m

となる。
τにより値の変化は極めて小さいので、雲が形成されるような気象現象においては、露点の減率は0.173K/100mで一定とみなしても、気象観測の結果には矛盾しない。
つまり、未飽和空気塊が断熱上昇する際には、気温が0.976K/100mの減率で減少するとともに、露点も0.173K/100mの減率で減少する。
気温と露点の減率には、0.8K/100m(=0.976-0.173)の差があり、上昇に伴う気温の低下よりも露点の低下の方が大きいので、両者の差は空気塊の上昇とともに減少し、或高度にたっすると差はなくなり、飽和状態が出現する。その高度を持ち上げ凝結高度という。
これを数式で表現すれば、上昇する空気塊の気温の高度分布は

T=T0-0.00976z

となるのに対して、露点の高度分布は

τ=τ0-0.00173z

となる。ここで、T0は地上気温、τ0は地上露点である。
両者が等しくなる(両式の値が等しくなる)高度、即ち、持ち上げ凝結高度をHとすると、

H=125(T00)

とう公式が導かれる。これをHenningの公式(持ち上げ凝結高度)と呼ぶ。
つまり地上の気温と露点の差(湿数と呼ぶ)を125倍すれば持ち上げ凝結高度の値がm単位で得られることになる。例えば、地上で気温T0と露点τ0の差が10℃あれば、持ち上げ凝結高度は1250mとなる。
未飽和湿潤空気塊が断熱上昇する際の露点τの減率は、厳密には、一定ではないので、持上げ凝結高度Hを正確に求めようとする場合には、Henningの公式では不十分であるり、空気塊を少しずつ上昇させ、気温、露点、両者の差を確認する作業を繰り返して、正確な凝結高度と凝結温度を求める。空気塊が未飽和の間は、温位θと水蒸気量εe/pが保存されるので、地上での気圧と気温が、それぞれ、p0とT0の未飽和湿潤空気塊が気圧pの高度に達した時の気温Tと水蒸気圧eおよび露点τは、それぞれ、次式

T=T0(p/p0)R/Cp

e=e0(p/p0)

τ=237.3/{7.5/log10(e/6.11)-1}

により定まる。T-273.15>τの間は未飽和なので、更に気圧pをdpだけ減少させて新しい気温Tと水蒸気圧eおよび露点τを求める。T-273.15=τを満たす高度Hが持上げ凝結高度LCLであり、その時の気温が持上げ凝結温度TLCLである。空気塊が地上から持上げ凝結高度Hまで乾燥断熱減率0.00976K/mで上昇したわけだから、持上げ凝結高度Hは、

H=(T0-TLCL)/0.00976

としてもとまる。

モーメント (moment)
 力学では、momentに能率の邦語を当てる。位置ベクトルrの場所に任意のベクトルAがある時、位置ベクトルrと任意のベクトルAの外積r×AをベクトルAのモーメントと呼ぶ。任意のベクトルAが力Fの時、r×Fは力のモーメントないしトルクと呼ばれ、任意のベクトルAが運動量mvの時、r×mvは運動量モーメントないし角運動量と呼ばれる。
ベクトルAのモーメントr×Aは、位置ベクトルrと任意のベクトルAの両方に垂直で、これに平行に置いた右ネジを位置ベクトルrが向いている方向から任意のベクトルAが向いている方向へ回転させた時当該の右ネジが進む方向を向き、大きさは位置ベクトルrと任意のベクトルAを2辺とする平行四辺形の面積に等しいベクトルである。つまり、位置ベクトルrと任意のベクトルAの成す角をθとおくと、ベクトルAのモーメントr×Aの大きさは、

|r||A|sinθ

と表される。さらに、

|r|=r

|A|=A

とすると、ベクトルAのモーメントr×Aの大きさは、

r A sinθ

と表現できる。即ち、ベクトルAのモーメントr×Aの大きさは、位置ベクトルの大きさとベクトルAの動径に垂直成分という2つのスカラーの積で表される。
 一方、数学では、出現確率分布の特徴を数値化したパラメータとしてmomentを定義し、これに積率の邦語を当てる。f(x)を連続確率変数xの密度関数とするとき、

 
∫xkf(x)dx
-∞

を、f(x)に対する原点の回りのk次の積率、

 
∫(x-μ)kf(x)dx
-∞

をf(x)に対する平均値の回りのk次の積率と定義する。ここで、平均値μはf(x)に対する原点の回りの1次の積率

     
μ=∫xf(x)dx
     -∞

である。f(x)に対する平均値の回りの2次の積率σ2

      
σ2=∫(x-μ)2f(x)dx
      -∞

は分散と呼ばれる。なお、f(x)に対する平均値の回りの1次の積率は

 ∞                              ∞                        ∞
∫(x-μ)f(x)dx=∫xf(x)dx-μ∫f(x)dx=μ-μ=0
-∞                           -∞                       -∞

となる。
 もう一度力学の問題に戻る。x軸上のみに質量が分布する棒状の剛体の場合、x軸上の質量分布はxの関数ρ(x)として表現できる。ここで、ρは線密度と呼ばれる。この線密度関数ρ(x)に対してx軸上の任意の点aの回りの2次の積率Iを求めてみると

  
I=∫(x-a)2ρ(x)dx
  -∞

となる。棒状剛体をΔxi間隔でN個の微小部分に分割すると、ρ(xi)Δxi は微小部分の質量 mi を意味するから、Iは、

   N
I=(xi-a)2mi
   i=1

と表せる。この量Iは、任意の点aの回りの棒状剛体の慣性モーメントと呼ばれる。慣性モーメントIは、位置ベクトルrと何らかのベクトル量Aの外積r×Aとして定義する力学におけるモーメントとは定義の仕方が異なるが、数学に於ける確率密度関数のモーメントの定義の仕方を質量に適用したもの、即ち、質量に対する回転の中心の周りの2次モーメントと見なすことができる。慣性モーメントを邦語で表記する場合は、慣性能率と表記される。
靄 (mist)
雲(cloud)、霧(fog)、靄(mist)はいずれも、空気中に浮遊している微水滴であり、広義にはすべて雲である。地上に接している雲を、霧乃至は靄と呼び、両者は視程により区別される。視程が1km以下の場合を霧、視程がそれ以上の場合を靄とする。霧と靄の視程の違いはその粒径の相違に対応しており、靄を形成している微水滴の半径が数μmより小さいのに対して霧を形成している微水滴は大きめの雲粒子で半径が50μm程度ある。しかも、靄には霧に比べて極端に小さな微水滴でしかいられない理由がある。純粋な水により形成された微水滴の水面付近の飽和水蒸気圧は微水滴の半径が小さくなるほど飽和水蒸気圧が大きくなるのに対して、化学物質が溶けた水により形成された微水滴の水面付近の飽和水上気圧は化学物質の濃度で定まるある特定の半径より小さくなるほど飽和水蒸気圧が小さくなることが知られており、回りの空気の相対湿度が90%台の未飽和状態であっても空気中に微水滴として存在できる。純粋な水により形成された微水滴は、半径が小さいものほど飽和水蒸気圧が大きいために不飽和状態にあり蒸発して消滅し、半径が大きいものほど飽和水蒸気圧が小さいために飽和状態にあり消滅した半径の小さい微水滴から蒸発した水蒸気を併合してより大きな水滴に成長するのに対して、化学物質が溶けた水により形成された微水滴の飽和水蒸気圧と半径の関係はこの逆であるため、低い相対湿度の状態で形成された小さな微水滴は大きな微水滴に成長することができず、いつまでも小さな微水滴のままの状態を保ち、靄となる。回りの空気の相対湿度が変化しなくても、霧粒子が成長して雨滴となることはあるが、靄の粒子が成長して霧や雨滴になることはない。視程の減少を伴う現象に霞(haze)があるが、霞は空気中に浮遊するダストや煙により視程が減少しているので、回りの空気の相対湿度が変化しても、霞が靄や霧になったり、雨滴が生成されたりはしない。
モル (mole)
物質の量のSI基本単位で、記号molで表される。0.012kgの炭素-12に含まれる炭素原子数と同数の単位粒子を含む系の物質の量を1モルとすると定められている。
モルという単位が用いられる際には、単位粒子が明確に規定されている必要があり、原子、分子、イオン、電子その他の粒子またはこれらの特定の組み合わせを単位粒子と呼ぶ。例えば、1モルのHgClの質量は236.04グラム、1モルのHg+の質量は200.59グラム、1モルのHg22+の質量は401.18グラム、1モルのe-の質量は5.4859×10-7キログラムである。
 

中川用語集            ←も→